みなさん、こんにちは!
今年度は、小学校で担任をしながら、中学校で技術科の授業も担当しています。
自治体の異動、中学校も教えるということで、4月からバタバタと過ごしていましたが、
余裕のある夏休みに「技術科」のことについて、改めて学習しております。
さて、教育界で大きな話題となっている次期学習指導要領の改訂。
今回の改訂では、小学校にも新たに「情報」に関する領域が導入されるなど、情報教育・テクノロジー教育の大きな波がやってきています。
そんな中で、小学校の先生方からよくこんな声を聞きます。
- 「小学校に『情報』ができるって言われても、具体的にどう指導をつなげていけばいいの?」
- 「そもそも、中学校の『技術科』ってどんな授業をしているの?」
小学校にはない「技術科」という教科。なんとなく「木工やプログラミングをやっているのかな?」というイメージはあっても、
実際に何をどのように教えているのかは、謎に包まれている部分が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、小学校担任×中学技術科という両方の視点を持つ立場から、
中学校・技術科の基本的な仕組みや、
小学校での学びとのつながり
を分かりやすく解説していきます!
第1章:技術・家庭科とは? 〜「2つで1つ、でも免許は別」の不思議〜
みなさんは、「技術科」と聞くとどんなことを思いだしますか?
世代によって学習してきたことが違いますので、
Geminiに40歳前後になりきって想い出を聞いたところ…
木材加工、パソコン、はんだだそうです!
画像にしてもらうとこんな感じです!

実際には、木材加工室とパソコン室は別だと思いますが、
懐かしいと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここから、「技術科」についてお話をしていきたいと思います!
中学校の教育課程では「技術・家庭科」という1つの教科として扱われています。
そのため、通知表や時間割でも「技術・家庭」とまとめられていることが多いのですが、
実は「技術分野」と「家庭分野」で教員免許が完全に独立しています。
つまり、原則として技術の免許しか持っていない教員が家庭科を教えることはできませんし、
その逆も同様です(※教員不足などの事情により例外的に「臨時免許状」の発行を受けて指導する場合を除きます)。
小学校で言えば「理科」と「社会」が1つの教科名になっているような感覚に近いかもしれません。
ちなみに、「技術=男子」「家庭=女子」が別々に授業を受けていた時代を記憶されている先生もいらっしゃるかもしれませんが、
現在は性別に関係なく、全生徒が「技術」と「家庭」の両方をバランスよく学んでいます。
第2章:技術科が目指しているもの 〜「テクノロジーを上手に活かす力」を育てる〜
では、技術科とは一体何を学ぶ教科なのでしょうか?
中学校学習指導要領(平成29年告示)では、技術分野の目標について次のように示されています。
【学習指導要領における技術分野の目標】
生活や社会の中から技術に関わる問題を見出し、
技術の評価・活用、設計・計画、制作・育成、改善・修正などを通して、
課題を解決する力を培うとともに、技術の社会的な役割や影響を理解し、適切に活用する力を養う。
(出典:文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 技術・家庭編』より抜粋)
学習指導要領ではこの力を「技術的素養」と表現していますが、少し難しく感じられますよね。
もっと分かりやすく言えば、「身の回りのテクノロジー(モノやデジタル)の仕組みを理解し、
生活や社会の中で上手に使いこなし、改善していく力」のことです。
単に「棚を作る」「パソコンを動かす」といった作業技能(手先の技術)を身につけることだけが目的ではありません。
「なぜこの材料や構造が使われているんだろう?」
「どうすればもっと便利で、環境にも優しい仕組みになるだろう?」
「デジタル技術を安全かつ快適に使うには、どうすればいいだろう?」
このように、私たちが日常的に使っている「モノ」や「情報」の仕組みを
科学的・技術的な視点から解き明かし、課題解決に活かす力を育んでいます。
一見すると専門的で、小学校の学びとは離れているように見えるかもしれません。
しかし実は、子どもたちが中学校の技術科で発揮するこの力は、
小学校の日々の授業や活動の中でしっかり培われているものなのです。
第3章:技術科の授業時間数 〜3年間でわずか「87.5時間」の工夫〜
「技術科って、毎週しっかり授業があるのかな?」と思われがちですが、
実は中学校の教科の中で授業時間数が非常にコンパクトにまとまっている教科です。
現行の中学校3年間で履修する技術科の総コマ数は、合計87.5時間となっています。
○中学1年生: 週1時間(年間35時間)
○中学2年生: 週1時間(年間35時間)
○中学3年生: 隔週1時間=週0.5時間(年間17.5時間)
この驚くほど限られた時間の中で、安全を最優先に確保しながら効率よく授業を進めていかなければなりません。
私が使っている自治体の教科書は、250ページ程度あり1時間に3ページ程度進めなくてはなりません。
そのため中学校の現場では、指導法の工夫やデジタルツール(ICT)のフル活用によって、密度の高い授業づくりが行われています。
なお、次期学習指導要領の改訂に向けた審議の中では、
技術科の授業時間数を増加させる方向で検討が進められているとされていますが、
具体的な時間数やコマ数については現時点では確定しておらず、未定となっています。
この限られた時間の中で具体的にどのような学習を行っているのでしょうか?
詳しい授業内容(4つの領域)については、続く第4章で分かりやすく解説します!
第4章:技術科の内容 〜4つの領域で学ぶこと〜
中学校の技術科は、大きく分けると4つの領域で構成されています。
それぞれの領域で「どんな知識や技能を学び、どう社会に活かすか」を体験的に学んでいきます。
下の図が、4領域についてまとめたものです!

では、各領域を詳しく説明していきます!
A 材料と加工の技術
木材、金属、プラスチックなどの材料の特性を知り、生活に役立つ製品を設計・製作する領域です。
- 道具や工具(両刃のこぎり、ベルトサンダーなど)の安全な扱い方
- 使用目的に合わせた設計図(製作図)の作成
- 材料の強度や加工性を考慮したモノづくり
B 生物育成の技術
野菜や作物などの生物を育て、その生育環境を技術的にコントロールする領域です。
- 土壌、光、水、温度などの育成環境の管理・調節
- 病害虫への対策や、安全な作物の栽培
- 生物育成技術が社会や環境(食糧問題など)に果たす役割の理解
C エネルギー変換の技術
電気や運動エネルギーなどの仕組みを知り、効率的かつ安全に活用する領域です。
- 電気回路の作成や、ハンダ付けなどの技術
- モーターやギアを使ったエネルギーの伝達・変換メカニズム
- 省エネ技術や再生可能エネルギーなど、持続可能な社会に向けたエネルギーの活用
D 情報の技術
プログラミングやネットワーク、情報セキュリティなど、現代のデジタル社会を生きる基礎を学ぶ領域です。
- コンピュータやネットワークの基本的な仕組み
- プログラミングによる計測・制御(センサを使った自動制御など)
- 交互にやり取りできる双方向のWebコンテンツづくり
- 情報モラル、セキュリティ、データの適切な活用法
次期学習指導要領で注目される「小学校との新しい接続」
現在進められている次期学習指導要領の改訂議論では、小学校の「総合的な学習の時間」等において、単にタブレットを使うだけでなく、
「情報領域」の考え方を取り入れた探究学習や、「情報を基盤とした生産技術」に触れる学習を取り導入していくことが話し合われています。
デジタルと実際のモノづくり・生産活動が融合していく現代社会において、
小学校段階から「情報」や「テクノロジーの役割」を体系的に捉える試みが、
まさに中学校技術科への架け橋となろうとしています。
第5章:技術科と「小学校の学び」のつながり
ここまで中学校技術科の概要を見てきましたが、実はこれらの学びはすべて小学校での日々の授業と深くつながっています。
小学校のどの教科や活動と結びついているのかを紐解いてみましょう。
「プログラミング・ICT活用」からのつながり
GIGAスクール構想の中で、小学校でも普段からタブレット端末を使いこなしている子どもたち。
タイピングや端末操作、Scratchなどでのプログラミング体験は、そのまま「情報の技術」の確かな土台となっています。
「図画工作」からのつながり
手先を使った工作体験や、ハサミ・彫刻刀といった道具の使い方の基礎は、
そのまま「材料と加工」の設計・製作に活きています。
「自分の思い通りに形を作る楽しさ」や「試行錯誤して工夫する経験」は、中学校でのより高度なモノづくりの大きな原動力です。
「生活科・理科」からのつながり
アサガオやホウセンカ、野菜の栽培などを通して育む「生命を大切にする心」や「生き物をよく観察する目」が、
「生物育成」のベースになっています。小学校での「なぜ枯れてしまったんだろう?」「どうすればよく育つのかな?」という気づきが、
中学校での技術的な環境管理へと進化します。
「理科」からのつながり
小学校理科で学ぶ「電気の利用」や「てこ・力学」などの学習は、技術科の「エネルギー変換」とダイレクトにつながっています。
実験を通して培った科学的な探究心が、中学校では「社会や生活の中でどう活用・制御されているか」という実践的な視点へと拡がっていきます。
「算数」からのつながり
算数で育む基礎的な技能や思考力は、技術科のさまざまな場面で欠かせません。
例えば「材料と加工」で正確な等角図などの製作図を描く際には、
定規を使って「きっちりとした長さの線を引く」「正確な角度を測る」という算数・図形の基礎がダイレクトに求められます。
また、「情報の技術」で扱うデジタルデータ(ビットやバイトなど)の情報量の計算や転送速度の計算などでも、
小学校で培った基礎的な計算力が学びを支えています。
「社会」からのつながり
5年生の社会科で学ぶ「我が国の産業(農業・水産業・工業)」の学習とも深く結びついています。
社会科では、ビニールハウスの自動温度管理や自動給水など、生産性を上げるためにテクノロジーが活用されている様子を学びます。
中学校の技術科では、まさにその「自動制御されている仕組み」や「プログラミングされた環境管理の裏側」を自分たちの手で実際に組み立て、
体験的に学んでいきます。
第6章:次期学習指導要領に向けて、小中で「情報・技術」の学びを拓こう
次期学習指導要領の改訂により、小学校においても新たに「情報」に関する領域が導入されるなど、
情報教育・テクノロジー教育は大きな転換期を迎えています。
「小学校で『情報』を教える」と聞くと身構えてしまう先生もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その学びが最終的にどこへ向かうのか——そのゴール地点のひとつが、中学校の「技術科(特に情報の技術)」です。
中学校でどのような知識・技能を学び、どのような社会像を目指しているのかを知っておくことは、
小学校での日常的なICT活用やプログラミング、そして新設される「情報」領域の授業づくりにとっても、大きな道しるべになります。
小学校には「技術科」という名称の教科はありません。
しかし、先生方が日々子どもたちに届けている学びの芽は、間違いなく中学校の技術科で大きな花を咲かせています。
義務教育9年間という長いスパンを見据え、小学校と中学校が手を取り合いながら、
子どもたちの未来に必要な「情報・モノづくり教育」を一緒に届けていきましょう!
このサイトでも引き続き小学校「総合的な学習の時間(情報領域)」や中学校「技術科」について動きがあれば、発信していきます。
ぜひ、ご覧ください!

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